実務ガイド

ドイツのGmbHとUG(haftungsbeschränkt)の違い 完全ガイド:資本金・積立義務・現物出資・移行の実務 2026年版

2026年6月16日(火)

ドイツで現地法人を立ち上げるとき、多くの日系企業が最初に迷うのが GmbHにするか、UG(haftungsbeschränkt)にするか という法人形態の選択です。どちらも有限責任の会社(Kapitalgesellschaft)ですが、必要な資本金、利益の積立義務、現物出資の可否などに明確な違いがあります。形態の選択は、初期コストだけでなく、取引先からの信用力や将来の増資・移行にも影響するため、入口で正しく理解しておくことが重要です。

本ガイドでは、日系企業の経営・管理担当者向けに、GmbHとUGの違いを条文に沿って整理し、どちらを選ぶべきかの判断基準までを解説します。設立全体の流れはドイツ会社設立サービス、設立直後の実務はGmbH設立後90日チェックリストもあわせてご覧ください。

GmbHとは

GmbH(Gesellschaft mit beschränkter Haftung)は、ドイツで最も一般的な 有限責任会社 です。出資者(社員)は出資額の範囲でのみ責任を負い、会社の債務に対して個人資産で責任を負いません。信用力・知名度が高く、日系企業のドイツ子会社の多くがこの形態を採用します。商号には「GmbH」を含めます。

UG(haftungsbeschränkt)とは:ミニGmbH

UG(Unternehmergesellschaft (haftungsbeschränkt))は、2008年のGmbH法改正で導入された、少額資本で設立できるGmbHの一種 です。「ミニGmbH」とも呼ばれ、スタートアップや小規模な市場参入で活用されます。法的にはGmbHの特則(§5a GmbHG)として位置づけられ、有限責任である点はGmbHと同じです。商号には「UG (haftungsbeschränkt)」を含める必要があります。

決定的な違い①:最低資本金

最も大きな違いが 最低資本金(Stammkapital) です。GmbHは§5 GmbHGにより 最低25,000ユーロ が必要で、登記の前に§7 GmbHGに基づき少なくともその半額(12,500ユーロ)以上を払い込む必要があります。一方、UGは 1ユーロから 設立でき、初期の資金的ハードルが格段に低いのが特徴です。資本金の少なさは、設立のしやすさと引き換えに、後述する積立義務や信用面の制約を伴います。

決定的な違い②:UGの積立義務とGmbHへの移行

UGには、GmbHにはない 法定積立義務 があります。§5a GmbHGにより、UGは毎年の利益(前年の繰越損失を控除後)の 4分の1(25%)を法定準備金(gesetzliche Rücklage)として積み立てる 必要があります。この準備金は、損失の補填などにしか使えません。

この仕組みは、UGに資本を蓄積させ、いずれ通常のGmbHへ移行させることを想定したものです。準備金などを原資に増資し、資本金が 25,000ユーロに達すれば、GmbHへ移行 できます(義務ではありません)。会計上の積立処理はドイツHGB会計ガイドも参考になります。

決定的な違い③:現物出資(Sacheinlage)の可否

GmbHは、現金だけでなく 現物出資(Sacheinlage、設備・債権・知的財産など) で資本を構成できます。これに対し、UGは 現物出資が認められず、現金出資のみ です。会社の合併・組織再編による設立(Umwandlung)は現物出資とみなされるため、UGの設立手段としては使えません。日本本社が設備や事業を現物で拠出して現地法人を作りたい場合は、GmbHが前提となります。

共通点:有限責任・登記・課税

形態は違っても、共通点も多くあります。いずれも有限責任の資本会社で、商業登記簿(Handelsregister)への登記と公証手続きが必要です。課税面では、法人税(Körperschaftsteuer)・連帯付加税(Solidaritätszuschlag)・営業税(Gewerbesteuer) の扱いは基本的に同じで、UGだから税率が低いということはありません。法人税の実務はドイツ法人税申告完全ガイド、取締役の責任はGmbH取締役の要件と責任で詳説しています。

比較のまとめ

観点 GmbH UG(haftungsbeschränkt)
最低資本金 25,000ユーロ(半額以上を払込) 1ユーロから
積立義務 なし 利益の25%を準備金へ
現物出資 可能 不可(現金のみ)
信用力・印象 高い 相対的に低く見られがち
課税 同じ 同じ
商号 「GmbH」 「UG (haftungsbeschränkt)」

どちらを選ぶべきか

判断の軸はおおむね次の通りです。取引先の信用・知名度を重視し、十分な初期資本があるならGmbH が無難です。とくにBtoBで大企業と取引する場合、UGは与信や入札で不利に働くことがあります。一方、まずは小さく市場性を検証したい、初期資本を抑えたいならUG が選択肢になります。UGで始めて、事業が軌道に乗ってからGmbHへ移行する道もあります。日系企業の本格進出では、信用面からGmbHを選ぶケースが多いのが実情です。

設立手順の概要

  1. 商号・事業目的・出資者・取締役の決定
  2. 定款(Satzung)の作成(簡易な場合は定型書式 Musterprotokoll も利用可)
  3. 公証人による定款認証
  4. 資本金の払込み(GmbHは12,500ユーロ以上、UGは設定額)
  5. 商業登記簿への登記申請
  6. 税務署・社会保険・必要な許認可の手続き

設立手順の詳細はDACH設立手順も参考になります。

費用の目安

項目 概算
公証・登記費用 資本金・形態により変動
定款作成・法務支援 案件による
設立後の維持コスト(会計・税務) 月額ベース

UGは資本金が少ない分、公証・登記の費用も抑えられる傾向がありますが、会計・税務などの維持コストはGmbHとほぼ同等です。維持コストの内訳は法人維持コストをご覧ください。

UGを選ぶ際の注意点

UGは設立のハードルが低い反面、いくつかの実務的な注意点があります。

第一に、過少資本のリスク です。資本金が極端に少ないと、設立直後から債務超過に陥りやすく、取締役は支払不能・債務超過に伴う倒産申立義務への対応を迫られます。当面の運転資金を見込んだ資本設定が現実的です。

第二に、信用面の制約 です。商号に必ず「(haftungsbeschränkt)」と付くため、取引先は資本の薄い会社であると認識します。銀行融資やリース、与信枠の設定、入札などで不利に働くことがあります。

第三に、積立義務の継続 です。利益の25%を準備金に積み立てる義務は、配当可能な利益を圧迫します。利益を株主に還元したい場合には制約となります。

第四に、移行のコスト です。後からGmbHへ移行するには、増資・定款変更・公証・登記が必要で、相応の手間と費用がかかります。十分な初期資本があるなら、最初からGmbHを選んだ方が結果的に安く済む場合もあります。

これらを踏まえ、初期コストの低さだけでUGを選ぶのではなく、事業計画と資金繰り、取引先の信用要件 を総合的に見て判断することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q. UGはGmbHより税金が安いのですか。 A. いいえ。法人税・営業税などの課税はGmbHと同じです。違いは資本金と積立義務です。

Q. UGからGmbHへは必ず移行しないといけませんか。 A. 義務ではありません。資本金が25,000ユーロに達すれば移行できますが、UGのまま継続することも可能です。

Q. UGは信用面で不利ですか。 A. 資本金の少なさから、与信や入札で慎重に見られることがあります。BtoBの大口取引ではGmbHが好まれます。

Q. 現物出資で設立したい場合は。 A. UGは現物出資ができないため、GmbHを選ぶ必要があります。

Q. 1ユーロで本当に設立できますか。 A. 法律上は可能ですが、当面の運転資金が不足するため、現実的にはある程度の資本金を設定します。

実務チェックリスト

  • 必要な初期資本と取引先の信用要件を踏まえて形態を選んだか
  • GmbHの場合、登記前に12,500ユーロ以上を払い込む計画があるか
  • UGの場合、毎年25%の積立義務を会計処理に織り込んだか
  • 現物出資の予定があるか(あればGmbH前提)
  • 商号に正しい形態表記(GmbH/UG (haftungsbeschränkt))を入れたか
  • 将来のGmbH移行の可能性を見越した資本計画になっているか

まとめ

GmbHとUGは、有限責任・登記・課税では共通 する一方、最低資本金・積立義務・現物出資の可否 で明確に異なります。信用と現物出資を重視するならGmbH、初期資本を抑えて小さく始めるならUG、というのが基本的な選び方です。日系企業の本格進出では、取引先の信用要件からGmbHが選ばれることが多い点も押さえておきましょう。

TSM合同会社では、日系企業のドイツ進出にあたり、最適な法人形態の選択から設立・登記、設立後の会計・税務まで一貫して支援しています。形態選択にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。

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本記事は2026年6月16日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法務・税務助言に代わるものではありません。具体的な判断は最新の法令と専門家への確認のうえで行ってください。

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