ドイツのGmbHにかかる利益への税金は、法人税(Körperschaftsteuer/KSt)、連帯付加税(Solidaritätszuschlag)、営業税(Gewerbesteuer/GewSt) の3層構造です。連邦政府の投資促進機関GTAIの2026年版ファクトシートは、合計の税負担を平均で約30%としています。

本記事では、日系現地法人の経理・財務担当者向けに、税率の構造と計算例、2028年からの法人税率の引き下げ、年次申告と予定納税の期限、課税所得の主な調整項目、移転価格の文書化、税務調査への備えを整理します。

ドイツの法人税率(2026年)と実効税率の計算

3層税の構造

① 法人税(Körperschaftsteuer/KSt)

  • 税率:課税所得の15%(全国一律、法人税法第23条)
  • 課税ベース:課税所得。商法(HGB)上の年度利益を出発点に、税法上の調整を加えて算定する

② 連帯付加税(Solidaritätszuschlag)

  • 税率:法人税額の5.5%(所得の5.5%ではない)
  • 法人税と合わせた負担は15.825%。GTAIは約15.8%と表記しています
  • 営業税には課されません

③ 営業税(Gewerbesteuer/GewSt)

GTAIによれば、営業税は連邦法で定められた市町村税で、課税所得の算定ルールは全国共通ですが、税率は各自治体が定める倍率(Hebesatz) で決まります。

  • 計算:営業収益 × 基本税率3.5% × 自治体の倍率
  • 倍率:GTAIによれば全国平均は400%をわずかに上回る水準で、法定の下限は200%、上限はありません。GTAIは、下限を280%に引き上げる計画があるとしています
  • 平均的な負担:営業税の平均負担は14%をわずかに上回る(2024年、GTAI)
  • 個人事業や人的会社に認められる24,500ユーロの控除額は、GmbHなどの資本会社にはありません(営業税法第11条)

実効税率の計算式と計算例

実効税率 = 法人税15% + 連帯付加税0.825% + 営業税(3.5% × 倍率)

倍率400%の自治体では、営業税は 3.5% × 4.0 = 14% となり、合計は 15% + 0.825% + 14% = 29.825%(約30%) です。

営業税の計算例

GTAIのモデル計算に沿って、課税所得100万ユーロのGmbHが倍率400%の都市Aにある場合を計算します。

段階 計算 金額
営業税の基準額(Steuermessbetrag) 100万ユーロ × 3.5% 35,000ユーロ
営業税 35,000ユーロ × 400% 140,000ユーロ
法人税 100万ユーロ × 15% 150,000ユーロ
連帯付加税 150,000ユーロ × 5.5% 8,250ユーロ
合計 298,250ユーロ(29.825%)

実務では、営業税の課税標準は法人税の課税所得そのままではありません。営業税法第8条により、支払利息などの資金調達コストの一部が加算され、第9条により一部が減算されます。支払利息の多い会社では、営業税の負担が上の計算より大きくなる点に注意が必要です。また、営業税自体は法人税の計算上、損金になりません。

倍率は自治体ごとに毎年決められるため、拠点を選ぶときや予算を組むときは、所在地の自治体が公表する最新の倍率で計算します。

【重要】2028年から法人税率は段階的に10%へ引き下げ

2025年7月に成立した投資即時プログラム法(Investitionssofortprogramm) により、法人税率は2028年から毎年1%ポイントずつ引き下げられ、2032年に10%になります(連邦財務省(BMF)、連邦議会の可決)。

年 法人税率(KSt)
2026・2027年 15%(現行)
2028年 14%
2029年 13%
2030年 12%
2031年 11%
2032年以降 10%

BMFとGTAIは、これにより合計の税負担が現在の約30%から2032年には約25% に下がるとしています。営業税と連帯付加税の仕組みは変わりません。

同じ法律では、次の措置も導入されています(BMF)。

  • 定率法による減価償却の再導入:2025年7月1日から2027年12月31日までに取得した動産の固定資産について、最大30%
  • 研究開発税額控除(Forschungszulage)の拡充:2026年から、対象費用の上限を年1,000万ユーロから1,200万ユーロに引き上げ

2027年までの投資は減価償却の前倒しが使え、2028年以降は税率そのものが下がる——という時間軸を、中期の事業計画や投資回収計算に織り込んでおくことをお勧めします。

年次税務申告スケジュール

年次申告の期限

租税通則法第149条により、暦年を対象とする税務申告の期限は次のとおりです。ノルトライン=ヴェストファーレン州財務局の案内によれば、新型コロナ対応で延長されていた期限は2024年分までで、2025年分からは通常の期限に戻っています。

区分 期限 2025年分の場合
税理士が関与しない場合 翌年7月31日 2026年7月31日
税理士が関与する場合 翌々年の2月末日 2027年3月1日(2月28日が日曜のため)

法人税、営業税、年次の付加価値税申告は、いずれも電子申告です。税理士が関与する場合でも、税務署が期限前に提出を求めることがあります。

付加価値税(VAT)の予定申告

VAT申告の詳細な手順はドイツVAT申告完全ガイドにまとめています。ベルリン市の行政サービスの案内によれば、予定申告(Umsatzsteuer-Voranmeldung)の期間は次のとおりです。

  • 原則:四半期ごと
  • 毎月:前年の税額が9,000ユーロを超える場合
  • 免除:前年の税額が2,000ユーロ以下の場合(2025年分から。以前は1,000ユーロ。ケルン商工会議所)
  • 期限:各期間の終了後10日目まで。申請により1か月の期限延長(Dauerfristverlängerung)を受けられる
  • 新設の会社:当年の見込み税額で申告期間が決まる

予定納税(Vorauszahlung)

  • 法人税:3月10日、6月10日、9月10日、12月10日(所得税法第37条を法人税法第31条で準用)
  • 営業税:2月15日、5月15日、8月15日、11月15日(営業税法第19条)

予定納税額は、税務署(営業税は自治体)が直近の確定税額や見込み所得をもとに決めます。

設立初年度

GTAIによれば、会社や恒久的施設の設立から1か月以内に、税務登録のための質問票(Fragebogen zur steuerlichen Erfassung)を提出します。質問票に記入する初年度の見込み所得が、最初の予定納税額の基礎になります。

課税所得の計算

課税所得は、HGB(ドイツ商法典)に基づく決算利益を出発点に、税務上の調整を加えて計算します。HGB決算の基礎はドイツHGB会計ガイドを参照してください。

HGB利益から税務利益への主な調整

項目 調整 根拠
法人税・連帯付加税 加算 法人税法第10条
営業税 加算 所得税法第4条5b項
罰金・過料 加算 所得税法第4条5項8号
接待飲食費の30% 加算 所得税法第4条5項2号
隠れた利益配当(vGA) 加算 法人税法第8条3項
受取配当・株式売却益 95%を減算 法人税法第8b条

損金算入の主要論点

役員報酬の妥当性

出資者を兼ねる業務執行者への過大な報酬などは、隠れた利益配当(vGA) として課税所得に加算されます。判断の基準と実務はGmbH取締役報酬の税務:隠れた利益配当(vGA)で詳しく解説しています。

利息控除の制限(Zinsschranke)

所得税法第4h条により、純支払利息のうち、税務上のEBITDAの30%を超える部分は損金になりません。純支払利息が300万ユーロ未満であれば、この制限は適用されません。親子間貸付の金利水準と合わせて確認が必要な論点です。

繰越欠損金(Verlustvortrag)

  • 繰越期間:期限なく繰り越せます
  • 控除の上限:年100万ユーロまでは全額控除でき、それを超える部分は所得の一定割合までに制限されます。ケルン商工会議所によれば、2024〜2027年はこの割合が70% です(所得税法第10d条を法人税でも適用)
  • 株主の交代:法人税法第8c条により、5年以内に50%を超える持分が移転すると、原則として繰越欠損金は失われます。グループ内の再編(グループ条項)や、含み益の範囲での例外があります

グループ内での持分の組み替えを検討する場合は、事前に税理士と繰越欠損金への影響を確認してください。

移転価格の文書化

文書化の進め方の全体像は移転価格対応の5ステップ、本社費やマネジメントフィーの論点は本社費配賦とマネジメントフィーで解説しています。

2025年からの変更:30日以内の提出と取引マトリクス

BMFの取引マトリクスに関する通達(2025年4月2日)によれば、租税通則法第90条の改正により、2025年1月1日以降は、税務調査の開始通知(調査命令)の告知から30日以内に、求めを待たずに次の書類を提出する必要があります。

  • 取引マトリクス(Transaktionsmatrix)
  • マスターファイル(規模の要件を超える場合)
  • 異常な取引に関する記録

2025年に出された調査命令が2025年より前の年度を対象とする場合も、その年度について取引マトリクスを作成する必要があります。日本本社との取引の一覧を、調査が始まる前から整えておくことが前提になります。

国別報告書(CbCR)

連結売上高が7億5,000万ユーロ以上のグループは、国別報告書の対象です(租税通則法第138a条)。

違反した場合

租税通則法第162条により、文書を提出しない、または使えない場合は、所得の推計に加え、所得加算額の5〜10%(最低5,000ユーロ)の加算金が課されることがあります。提出が遅れた場合の加算金は最大100万ユーロです。

税務調査(Betriebsprüfung)対応

調査の流れ

  • 調査命令:対象の税目・年度が通知される。前述のとおり、ここから30日以内に取引マトリクスなどの提出期限が始まる
  • 現地調査:書類の確認と調査官との質疑
  • 最終協議・調査報告:指摘事項の確認と反論の機会
  • 更正処分への対応:合意した内容は更正され、不服がある場合は告知から1か月以内に異議申立て(Einspruch) ができる(租税通則法第355条)。異議が退けられた場合は財政裁判所に訴えることができる

日系企業が準備しておきたい論点

  • 日本本社との取引:移転価格、本社費・ロイヤリティの根拠と契約
  • 駐在員の給与:日本本社が負担する部分の扱いと、ドイツでの給与課税
  • 恒久的施設:日本本社がドイツで直接行っている活動がないか。論点はドイツの恒久的施設(PE)リスクを参照
  • 文書の言語:日本語のみの契約書・社内資料は、調査で説明しにくくなります。重要な文書はドイツ語または英語で用意しておきます

主な税務上の選択肢

① 拠点の選定と営業税の倍率

営業税の倍率は自治体ごとに異なるため、拠点選定の段階で、候補地の倍率を比較しておきます。倍率の差は、そのまま営業税の負担の差になります。

② 税務上の連結(Organschaft)

  • 仕組み:親会社と子会社の損益を通算できる制度。法人税と営業税の両方に適用される
  • 要件:親会社が事業年度の初めから子会社の議決権の過半数を持つこと、少なくとも5年間の利益移転契約(Gewinnabführungsvertrag) を締結し、実際に実行すること(法人税法第14条)
  • 日系企業の場合:親会社の持分がドイツ国内の事業所に帰属していることが必要なため、日本本社がドイツの事業所を通さずに直接保有する子会社との間では使えません。ドイツに持株会社を置き、その傘下に複数の事業会社を持つ場合に検討する制度です。持株会社の設計はドイツ子会社と持株会社の設計をご覧ください

③ 持株会社と配当・売却益

法人税法第8b条により、ドイツの会社が受け取る配当と株式の売却益は、その95%が課税所得から除かれます(5%は損金不算入とみなされる)。配当については、暦年の初めに10%以上の持分を持っていることが条件です。

④ 研究開発税額控除(Forschungszulage)

対象となる研究開発費の25%(中小企業は35%)が、税額控除または現金で支給されます。前述のとおり、2026年から対象費用の上限は年1,200万ユーロに引き上げられています。詳細はドイツ研究開発税額控除ガイドをご覧ください。

専門家との連携

税理士(Steuerberater)の役割

  • 月次の記帳・予定申告
  • 年次決算と税務申告
  • 税務調査への対応
  • 移転価格の文書化と国際税務

税理士事務所を選ぶときの確認点

  • 対応範囲:記帳・給与計算・年次申告・移転価格・国際税務のどこまでを担うか
  • 日本本社との連携:日本の連結決算のスケジュールに合わせた報告ができるか、英語または日本語で対応できるか
  • 報酬の算定方法:税理士報酬令(StBVV)に基づく算定か、個別の合意か
  • 税務調査の経験:外国親会社を持つ子会社の調査に対応した経験があるか

報酬は依頼範囲と取引量で大きく変わるため、複数の事務所から見積りを取って比較します。年間の維持費全体はドイツGmbHの維持費用を参照してください。

J-SOX 対応

日本本社が上場会社の場合

  • 業務処理統制(PLC) の整備
  • IT全般統制(ITGC) の確立
  • 全社統制(CLC) の構築

ドイツ子会社の J-SOX 範囲

重要性の判定(連結への影響度とリスク評価)により範囲が決まります。対象になった場合の主な統制領域は、売上・売掛金、仕入・買掛金、固定資産、給与、税務の各プロセスです。日本本社の内部監査・監査法人との間で、評価の枠組みと調書の言語をそろえておくと、年次の評価が進めやすくなります。

日系企業が直面しやすい落とし穴

落とし穴① 移転価格の文書が調査開始時にそろっていない

2025年からは、調査命令の告知から30日以内に取引マトリクスなどを提出する必要があります。設立初年度から、日本本社との取引の一覧と契約を整えておきます。

落とし穴② 申告期限を延長期間のまま考えている

新型コロナ対応の延長は2024年分で終わりました。2025年分からは、税理士が関与していても翌々年の2月末日が期限です。

落とし穴③ 営業税の予定納税日を法人税と同じだと思っている

法人税は3・6・9・12月の10日、営業税は2・5・8・11月の15日で、納付日が異なります。

落とし穴④ 支払利息の多い会社で営業税を少なく見積もる

営業税では資金調達コストの一部が加算されます。親子間貸付の利息が大きい場合は、営業税の課税標準も確認します。

落とし穴⑤ 2028年からの税率引き下げを計画に反映していない

法人税率は2028年から毎年1%ポイントずつ下がり、2032年に10%になります。投資の時期と税率の変化をあわせて検討します。

実務チェックリスト

設立初年度

  • ☐ 税理士の選定・契約
  • ☐ 税務登録のための質問票(設立から1か月以内)
  • ☐ 月次会計記録の整備
  • ☐ 移転価格方針と日本本社との契約の整備
  • ☐ 取引マトリクスの作成方法の決定

通常運用(月次・四半期)

  • ☐ VATの予定申告(毎月または四半期ごと)
  • ☐ 法人税(3・6・9・12月10日)と営業税(2・5・8・11月15日)の予定納税
  • ☐ 月次キャッシュフロー管理

通常運用(年次)

  • ☐ 年次決算(HGBベース)
  • ☐ 年次税務申告(法人税・営業税・VAT)
  • ☐ 移転価格文書と取引マトリクスの更新
  • ☐ 内部監査・J-SOX 対応

税務調査時

  • ☐ 調査命令の告知から30日以内の書類提出
  • ☐ 専門家との連携
  • ☐ 最終協議への対応
  • ☐ 更正への同意、または1か月以内の異議申立て

まとめ:5つの最重要ポイント

  1. 3層構造で合計約30%:法人税15%、連帯付加税(法人税額の5.5%)、営業税(3.5% × 自治体の倍率)
  2. 2028年から法人税率を段階的に引き下げ:2032年に10%、合計負担は約25%へ
  3. 申告期限は2025年分から通常に:税理士関与なしは翌年7月31日、関与ありは翌々年2月末日
  4. 移転価格は30日ルール:調査命令の告知から30日以内に取引マトリクスなどを提出
  5. 営業税の計算を個別に確認:自治体の倍率と、支払利息などの加算で負担が変わる

おわりに

ドイツの法人税実務は、税率の構造そのものより、期限の管理と文書の準備で差がつきます。2025年からの期限の正常化と移転価格の30日ルール、2028年からの税率引き下げを踏まえて、年間の税務カレンダーと中期計画を見直しておくことをお勧めします。

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本記事は2026年9月29日時点の公開情報(連邦財務省、GTAI、州財務局・商工会議所の案内、関係法令)に基づく一般的な解説です。税法・税率は改正される可能性があります。実際の対応にあたっては、最新の情報と税理士の助言をご確認ください。