人事・労務

ドイツの在留資格(滞在許可)とビザ 完全ガイド:日本人のビザなし入国・EUブルーカード・家族帯同・永住の実務 2026年版

2026年6月18日(木)

日系企業がドイツへ駐在員を送り出す、あるいは現地で人材を採用するとき、必ず関わるのが 在留資格(滞在許可、Aufenthaltstitel)とビザ の手続きです。誰が、いつ、どこで、どの許可を申請するのかを取り違えると、就労開始が遅れ、事業計画にも影響します。とくに日本国籍者には他国にない特典があり、これを正しく使えるかどうかで手続きのスムーズさが大きく変わります。

本ガイドでは、日系企業の人事・総務担当者向けに、ドイツの在留資格制度の全体像と、入国から許可取得までの実務を整理します。就労ビザそのものの詳細な要件はドイツ就労ビザ完全ガイドを、入社後の社内手続きは入社手続き・オンボーディングを、あわせてご参照ください。

日本国籍者の特典:ビザなし入国と入国後の申請

最初に押さえるべき重要点です。日本国籍者は、ドイツへ ビザなしで入国 し、最長90日間滞在できます。さらに特筆すべきは、滞在令(AufenthV)第41条により、入国後にドイツ国内の外国人局(Ausländerbehörde)で在留許可を直接申請できる ことです。多くの第三国国籍者は本国のドイツ大使館・領事館で事前にビザを取得する必要がありますが、日本国籍者はこの事前ビザなしで現地申請できます。これは日独間の歴史的な関係(1927年の通商航海条約)に基づく優遇です。

ただし注意点があります。ビザなし滞在中の就労は原則として認められません就労令(BeschV)第30条の例外を除く)。したがって、在留許可(および就労許可)が下りるまでは実際の業務を始められない点を、赴任スケジュールに織り込む必要があります。また、必要な在留許可は 入国から90日以内に申請 しなければなりません。

滞在許可(Aufenthaltstitel)の主な種類

ドイツの在留資格は滞在法(AufenthG)に基づき、目的に応じて区分されています。主なものは次の通りです。

  • ビザ(Visum):本国で取得する短期・長期の入国査証。日本国籍者は前述の通り省略できる場合があります。
  • 一時在留許可(Aufenthaltserlaubnis):就労・家族帯同など目的別に発行される期限付きの許可。
  • EUブルーカード(Blaue Karte EU):高度人材向けの就労許可。後述の給与基準を満たす必要があります。
  • ICTカード(企業内転勤):日本本社など域外企業からEU域内の拠点へ転勤する管理職・専門職向け。駐在に該当することが多い区分です。
  • 定住許可(Niederlassungserlaubnis):期限のない永続的な在留資格(後述)。

EUブルーカードの要件と2026年の給与基準

高度人材の採用で活用されるのが EUブルーカード です。大学等の学位と、一定以上の給与を条件とします。給与基準は毎年改定され、連邦政府の公式ポータル(Make it in Germany)等によれば、2026年は一般職で年収50,700ユーロ(月額4,225ユーロ)以上人材不足職種(Mangelberufe)や新卒者は年収45,934.20ユーロ(月額3,827.85ユーロ)以上 とされています。人材不足職種にはMINT(理工系)、エンジニア、自然科学、医療、IT専門職などが幅広く含まれます。IT分野では、学位がなくても一定の実務経験があれば申請できる特例もあります。給与水準の設計はドイツ給与計算実務完全ガイドも参考になります。

企業内転勤(ICTカード)の活用

日本本社からドイツの子会社へ管理職や専門職を転勤させる場合、企業内転勤者向けのICTカード(ICT-Karte) が選択肢になります。これは、域外(日本など)の企業から、EU域内の同一グループ企業へ一定期間転勤する管理職・専門職・トレーニーを対象とする在留資格です。一定の在籍期間や雇用条件などの要件を満たす必要がありますが、グループ内の人材異動をEU域内で展開する際に有効です。駐在の形態(出向・転籍)や社会保険の扱いとあわせて、どの在留資格が最適かを早めに検討することが重要です。社会保険の二重加入回避については日独社会保障協定ガイドも参考になります。

入国から在留許可取得までの手順

日本国籍の駐在員の典型的な流れは次の通りです。

  1. ビザなしで入国(最長90日の滞在が可能)
  2. 住民登録(Anmeldung):転入先の住所を市区の住民登録窓口(Bürgeramt)に届け出ます。通常、転入から2週間程度が目安です。これは銀行口座開設などの前提にもなります。
  3. 外国人局(Ausländerbehörde)で在留許可を申請:雇用契約、学位証明、給与の証明、住居の証明、健康保険などを準備します。
  4. 就労許可付きの在留許可が発行されてから就労開始

この一連の手続きには予約待ちなどで時間がかかることがあるため、余裕を持ったスケジュール が重要です。駐在・出向の実務全般は駐在・出向実務もご覧ください。

家族の帯同(Familiennachzug)

駐在員が家族を帯同する場合、配偶者と未成年の子 の家族帯同が認められます。一般には配偶者に基礎的なドイツ語能力が求められることがありますが、EUブルーカード保持者の家族 などは語学要件が免除されるなど、優遇される類型があります。家族の在留許可も外国人局で申請します。

永住・定住への道(Niederlassungserlaubnis)

一定期間の滞在後には、期限のない 定住許可(Niederlassungserlaubnis) を取得できます。標準的には5年の滞在が目安ですが、EUブルーカード保持者は、ドイツ語の習熟度に応じて標準より大幅に短い期間 で定住許可を申請できる優遇があります。長期的なキャリア形成や家族の生活設計を見据えるうえで重要な選択肢です。

費用・期間の目安

項目 概算
在留許可の申請手数料 種類により数十〜百ユーロ規模
健康保険・住居の確保 別途必要
申請から発行までの期間 外国人局の混雑により変動

公的手数料自体は高額ではありませんが、予約待ちや書類準備の時間 が実務上のボトルネックになりがちです。

よくある落とし穴

  • ビザなし滞在中に 就労を始めてしまう(許可が下りるまで就労不可)
  • 住民登録(Anmeldung)を後回しにし、口座開設や許可申請が滞る
  • 90日の申請期限を意識せず、手続きが間に合わない
  • 給与がブルーカードの基準をわずかに下回り、区分が変わる
  • 家族の語学要件・書類を見落とす

よくある質問(FAQ)

Q. 日本人は本当にビザなしで就労できるのですか。 A. ビザなしで入国・滞在はできますが、就労には在留・就労許可が必要 です。許可前の就労は認められません。

Q. 申請はどこで行いますか。 A. 入国後、住所地を管轄する外国人局(Ausländerbehörde)で申請します。

Q. ブルーカードと通常の就労許可の違いは。 A. ブルーカードは高度人材向けで、給与基準を満たせば家族帯同や永住で優遇されます。

Q. 家族はいつ呼べますか。 A. 在留資格に応じて家族帯同が可能です。ブルーカード保持者は語学要件が緩和される場合があります。

Q. 手続きはどのくらいかかりますか。 A. 外国人局の混雑次第で数週間以上かかることもあります。早めの予約と準備が重要です。

実務チェックリスト

  • 赴任者の国籍と、ビザなし入国・入国後申請の可否を確認したか
  • 入国から90日以内の申請スケジュールを組んだか
  • 就労開始は許可発行後である前提で計画したか
  • 住民登録(Anmeldung)を入国後早期に行う段取りができているか
  • ブルーカードの場合、2026年の給与基準を満たしているか
  • 家族帯同の要件・書類(語学要件の有無)を確認したか
  • 健康保険・住居など申請に必要な書類を準備したか

まとめ

ドイツの在留資格は、目的別の滞在許可制度であり、日本国籍者には ビザなし入国+入国後申請 という大きな特典があります。一方で、許可が下りるまで就労できない点や、90日の申請期限、住民登録の順序など、つまずきやすい実務も多くあります。赴任スケジュールに手続き期間を織り込み、給与基準や家族要件を事前に確認することが、スムーズな赴任の鍵です。

TSM合同会社では、日系企業のドイツ赴任・採用にあたり、在留資格の選定から申請準備、入社後の労務手続きまでを一貫して支援しています。ビザ・在留手続きにお悩みの場合は、お気軽にご相談ください(人材採用支援サービスの詳細はこちら)。

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本記事は2026年6月18日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の在留・移民手続きの助言に代わるものではありません。具体的な判断は最新の法令と所管当局・専門家への確認のうえで行ってください。

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