規制・法務

ドイツの税金一覧:進出企業にかかる税の全体像【2026年版】

2026年7月11日(土)

ドイツに法人を設立すると、日本とは名前も仕組みも異なる複数の税金が、それぞれ別のタイミング・別の窓口で発生します。進出準備の段階では、個々の税の詳細よりもまず 「どんな税金が・いつ・どこに対して発生するのか」という全体地図 を持つことが重要です。全体像を誤ると、資金繰り・価格設定・拠点選定の前提がすべて狂います。

本ガイドは、日系企業のドイツ現地法人(GmbH)を前提に、関係するすべての税金を一覧で整理する「入口」のページです。各税の詳細は、それぞれの専門ガイドへのリンクから深掘りしてください。

ドイツの税金の全体マップ

税金 税率の目安(2026年) 納付先 タイミング
法人税(Körperschaftsteuer) 15% 連邦(税務署) 四半期予納+年次申告
連帯付加税(Solidaritätszuschlag) 法人税の5.5%(実効0.825%) 連邦 法人税と同時
営業税(Gewerbesteuer) 3.5%×自治体倍率=約7〜21% 市町村 四半期予納+年次申告
付加価値税(Umsatzsteuer/VAT) 19%(軽減7%) 税務署 月次・四半期申告
配当源泉税(Kapitalertragsteuer) 25%+Soli(日独租税条約で軽減 税務署 配当時
給与所得税(Lohnsteuer)源泉徴収 従業員の累進税率 税務署 毎月(翌月10日)
不動産取得税(Grunderwerbsteuer) 州により3.5〜6.5% 不動産取得時
不動産税(Grundsteuer) 自治体による 市町村 保有中、毎年

利益への課税:実効税率は約30%

会社の利益には、法人税15%(KStG §23)+連帯付加税0.825%+営業税(自治体次第で約7〜21%) の3層が課され、標準的な自治体では 合計約30% になります。営業税の倍率(Hebesatz)は市町村ごとに異なるため、拠点をどこに置くかで実効税率が数ポイント変わる のがドイツの特徴です。

なお、2025年に成立した投資促進法制により、法人税率は2028年から毎年1%ポイントずつ引き下げられ、2032年に10% となります(連邦財務省)。中期の事業計画にはこの引き下げを織り込めます。税率の計算例・申告スケジュール・税務調査対応はドイツの法人税率と申告実務で詳しく解説しています。

売上への課税:付加価値税(USt/VAT)19%

ドイツ国内の物品・サービスの販売には原則 19%、食品・書籍など一部に軽減税率 7% の付加価値税がかかります(UStG §12)。事業者は売上VATから仕入VATを控除した差額を、月次または四半期で申告・納付します(Voranmeldung、翌月10日期限)。

日系企業の実務では、VAT番号(USt-IdNr.)の取得が取引開始の事実上の前提 になること、EU域内取引のリバースチャージ、B2C越境ECの OSS/IOSS制度 が主要論点です。申告実務はドイツVAT申告ガイド、越境ECはEU VAT OSS/IOSS完全ガイドを参照してください。

日本への資金還流にかかる税:源泉税と租税条約

ドイツ子会社から日本本社への 配当 には、国内法上25%+Soliの源泉税がかかりますが、日独租税条約により、持株要件を満たす親子間配当は大幅に軽減(一定要件で免除) されます。適用には事前の手続き(連邦中央税務局への申請)が必要で、「条約があるから自動的に安くなる」わけではない点が実務の落とし穴です。

利息・ロイヤリティ も同様に条約・EU指令の適用対象です。配当・貸付・ロイヤリティなど、どの形で資金を還流させるかによる税負担の違いは親子間送金タイプ別ガイドで比較しています。

雇用に伴う税・負担:毎月の源泉徴収

従業員を雇うと、会社は毎月、給与所得税(Lohnsteuer)の源泉徴収と納付(翌月10日)、そして 社会保険料(賃金の約40%を労使折半) の納付義務を負います。税ではありませんが、社会保険の使用者負担は実質的な人件費コストとして税以上に重く、資金繰り計画に必ず織り込む必要があります。計算実務はドイツ給与計算の実務2026にまとめています。

不動産に関する税

オフィスや倉庫を 購入 する場合は、州ごとに 3.5%(バイエルン等)〜6.5%(NRW等) の不動産取得税がかかり、取得コストを大きく左右します。保有 中は毎年、自治体の不動産税(Grundsteuer)が発生します。賃借であればどちらも直接は発生しないため、進出初期は賃借が標準的な選択です。

拠点選定と営業税:場所で税負担が変わる

営業税の倍率は自治体の裁量で決まるため、同じ利益でも拠点の場所で税負担が変わります。たとえば課税所得100万ユーロの場合、倍率490%のミュンヘンでは営業税だけで約17万ユーロ、倍率250%のモンハイム(デュッセルドルフ近郊)では約9万ユーロと、年間8万ユーロ規模の差 になります。もちろん人材・顧客への近さが優先ですが、複数候補で迷う場合、営業税倍率は数字で比較できる判断材料です。都市部近郊の低倍率自治体(モンハイム、グリュンヴァルト等)に本店を置く戦略は、ドイツ企業でも広く行われています。

税務カレンダーの実例(12月決算の場合)

「いつ・何を」の感覚を掴むため、標準的な年間スケジュールを示します。

  • 毎月10日:前月分の付加価値税の申告・納付、給与所得税(Lohnsteuer)の納付
  • 3月・6月・9月・12月の各10日:法人税・連帯付加税の四半期予納
  • 2月・5月・8月・11月の各15日:営業税の四半期予納
  • 2月末:従業員への年次給与証明(Lohnsteuerbescheinigung)発行
  • 翌年2月末(税理士関与の場合):前年度の法人税・営業税・VAT年次申告の期限(関与なしは7月末)

月次の義務が思いのほか多いことが分かります。特に設立初年度は、税務署からの質問票対応・予納額の設定・VAT番号取得が集中するため、設立と同時に現地税理士を確保する のが実務の定石です。

進出フェーズ別:いつ・どの税が問題になるか

  1. 設立時:税務署への登録(質問票)、VAT番号の取得、給与源泉の登録
  2. 操業開始:月次VAT申告、毎月のLohnsteuer納付、四半期の法人税・営業税予納
  3. 初回決算後:年次申告(法人税・営業税・VAT)、予納額の見直し
  4. 利益還流時:配当源泉税と租税条約手続き
  5. 拡大期:拠点追加時の営業税倍率比較、不動産取得税、グループ内取引の移転価格

よくある誤解

  • 「法人税15%だから日本より安い」→ 営業税を足すと 約30% で、大差はありません(2028年以降は低下)
  • 「租税条約があるから源泉税はかからない」→ 事前手続きをして初めて 軽減されます
  • 「VATは消費者が払うもの」→ 申告・納付義務と資金繰り負担は事業者側にあります
  • 「税務は決算期だけの仕事」→ VATとLohnsteuerは 毎月 発生します

よくある質問(FAQ)

Q. 会社を作っただけで(利益ゼロでも)かかる税金はありますか。 A. 利益連動の法人税・営業税はゼロですが、VAT・給与源泉の申告義務や、最低限の申告コスト(税理士費用)は発生します。

Q. 税金はどこに払いますか。 A. 法人税・VAT・源泉税は管轄の税務署(Finanzamt)、営業税と不動産税は市町村です。窓口が分かれている点が日本と異なります。

Q. 日本の本社で納めた税金と二重課税になりませんか。 A. 日独租税条約と外国税額控除の仕組みで原則調整されます。配当・ロイヤリティの設計時に専門家確認をお勧めします。

Q. 初年度に赤字が出た場合、税金はどうなりますか。 A. 法人税・営業税は課税所得ゼロなら発生せず、欠損金は原則無期限で繰り越して将来の利益と相殺できます。ただし株主構成の大きな変動で繰越欠損金が消滅する規定があるため、グループ再編時は注意が必要です。

Q. 現地の税理士費用はどのくらい見ておくべきですか。 A. 会社規模により幅がありますが、小規模法人の記帳・申告一式で年間数千ユーロ〜1万ユーロ台が一般的な目安です。月次の記帳を自社で整えるほど費用は抑えられます。

まとめ

ドイツの税は、利益に約30%(3層構造)、売上に19%のVAT、給与に毎月の源泉徴収、還流に源泉税 という4つの流れで押さえると全体像が掴めます。個別の税率よりも、「毎月・四半期・年次」のリズムと納付先の違いを早い段階でカレンダー化することが、進出初年度の混乱を防ぐ最良の方法です。

TSM合同会社では、進出前の税負担シミュレーションから、現地税理士の選定・連携、設立後の税務体制構築まで一貫して支援しています(財務・会計サポートの詳細はこちら)。

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本記事は2026年7月11日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の税務助言に代わるものではありません。税率・制度は改正されるため、実際の判断は最新の法令と専門家への確認のうえで行ってください。

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