規制・法務

EU製品規制の全体像ガイド:CEマーキング・GPSR・REACH・EU域内責任者(2019/1020)の実務 2026年版

2026年6月14日(日)

ドイツ・EU市場へ製品を投入する日系企業にとって、避けて通れないのが EUの製品規制 です。CEマーキングだけを意識しがちですが、実際には一般製品安全規則(GPSR)、化学物質規制(REACH・RoHS)、そして域外メーカーに課される EU域内の責任者 要件など、複数の規制が層をなしています。どれか一つでも欠けると、税関での差し止め、市場からの回収、販売停止につながりかねません。

本ガイドでは、日系企業の法務・品質・輸出担当者向けに、EU製品規制の 全体像 を俯瞰し、それぞれの要点と相互関係を整理します。個別のCEマーキング手続きの詳細はCEマーキング完全ガイドを、コンプライアンス体制づくりはEUコンプライアンス体制ガイドを、あわせてご参照ください。

EU製品規制の基本構造:新法的枠組み(NLF)

EUの製品規制の多くは、新法的枠組み(New Legislative Framework, NLF) と呼ばれる共通の考え方に沿っています。すなわち、(1) 製品が満たすべき「必須要求事項」を法令が定め、(2) その適合を整合規格(harmonised standards)で具体化し、(3) メーカーが自ら、または第三者認証機関(Notified Body)の関与のもとで適合性評価を行い、(4) 適合宣言(Declaration of Conformity) とCEマークで市場に表示する、という流れです。この構造を理解すると、個別の指令・規則も整理して捉えられます。

① CEマーキング:適合の証

CEマーキングは、製品がEUの該当する指令・規則の要求を満たすことを示すメーカーの宣言です。対象は機械、電気機器(低電圧指令LVD)、電磁両立性(EMC)、無線機器(RED)、玩具、医療機器(MDR)、保護具など多岐にわたります。製品カテゴリーによって、メーカー自己宣言で足りるものと、Notified Bodyの関与が必須のものに分かれます。詳細な手順・技術文書(Technical File)・適合宣言の作り方はCEマーキング完全ガイドで解説しています。機械分野の注意点は機械安全規格も参考になります。

② 一般製品安全規則(GPSR/EU 2023/988)

CEの対象でない一般消費者向け製品をカバーするのが 一般製品安全規則(GPSR) です。GPSR(規則 2023/988)は、2024年12月13日から適用 され、従来の一般製品安全指令(2001/95/EC)を置き換えました。

GPSRは、メーカーに対し、市場投入前の リスク評価技術文書 の作成・保管、製品への識別情報・連絡先の表示、トレーサビリティの確保、重大事故が起きた場合の当局への報告などを求めます。とりわけ重要なのが、EU域外のメーカーはEU域内の責任者(Responsible Person)を置かなければ、一般消費者向け製品を合法的に市場投入できない という点です。越境ECで直接EUの消費者に販売する場合も対象となります。

③ EU域内の「責任者」要件(市場監視規則 2019/1020 第4条)

日系企業が最も見落としやすいのが、市場監視規則(EU 2019/1020)第4条 に基づく EU域内の経済事業者(Wirtschaftsakteur) の指定義務です。規則2019/1020は、一定の調和法令の対象製品について、EU域内に拠点を持つ責任者が存在しなければ市場に出せない と定めています。

EUに拠点を持たない域外メーカーが、輸入者を介さず直接EUのエンドユーザーへ販売する場合、正規代理人(Authorised Representative) などをこの経済事業者として選任し、その名称と連絡先を製品(または包装・添付文書)に表示 しなければなりません。責任者は、当局の求めに応じて技術文書を提示し、是正措置をとる役割を担います。欧州委員会は2021年3月に第4条の実務指針を公表しています。輸入者・販売者の責任分担は輸入者責任もご覧ください。

④ 化学物質規制:REACH と RoHS

製品に含まれる化学物質には、製品分野を横断する規制がかかります。REACH規則(1907/2006) は、化学物質の登録・評価・認可・制限を定め、高懸念物質(SVHC) の候補リストに該当する物質が成形品中に重量比0.1%を超えて含まれる場合の情報伝達義務などを課します。EUに拠点を持たない域外メーカーは、唯一の代理人(Only Representative, OR) を選任することで、輸入者に代わって登録義務を果たすことができます。あわせて RoHS指令(2011/65/EU) は、電気電子機器における鉛・水銀・カドミウム・特定の臭素系難燃剤など有害物質の使用を制限し、CEマーキングと連動します。これらは部材サプライヤーからの含有物質情報の収集が出発点となり、サプライチェーン全体での管理が求められます。化粧品など分野別の最新動向は化粧品EU法改正まとめも参考になります。

⑤ 分野別規制の例

製品の種類によっては、上記に加えて分野別の規則が適用されます。医療機器は医療機器規則(MDR 2017/745)、機械は機械規則(2023/1230)、化粧品は化粧品規則(1223/2009、CEではなく責任者とCPNP届出が中心)、食品接触材や食品表示は別系統の規制が適用されます。自社製品がどの規制群に属するかの マッピング が出発点になります。

適合手続きの共通フロー

  1. 製品の分類と適用規制の特定(CE対象か、GPSRか、分野別か)
  2. 適用される整合規格の特定とリスク評価
  3. 適合性評価(自己宣言/Notified Body関与の判定)
  4. 技術文書(Technical File)の作成・保管
  5. 適合宣言(DoC)の作成、CEマーク等の表示
  6. EU域内責任者 の選任・製品への表示
  7. 上市後の市場監視対応・事故報告体制の整備

比較:CEマーキングとGPSR

観点 CEマーキング GPSR(一般製品安全規則)
対象 指令・規則が定める特定製品 他に規制のない一般消費者製品
表示 CEマーク+適合宣言 識別情報・連絡先の表示
域外メーカー 多くで域内責任者が必要 域内責任者が必須
主眼 設計・安全要求への適合 一般的な安全・トレーサビリティ

費用・体制の目安

項目 概算
適合性評価・試験(Notified Body) 製品・指令により大きく変動
EU域内責任者・正規代理人サービス 年額の委託費用
技術文書整備・規格適合の支援 案件による

域内責任者を社外サービスに委託するか、現地法人が担うかは、販売規模と製品リスクに応じて判断します。

よくある質問(FAQ)

Q. CEマークさえあれば他の規制は不要ですか。 A. いいえ。REACH・RoHSや、域内責任者の指定(2019/1020)など、CEと並行して満たすべき義務があります。

Q. 越境ECで直接販売する場合も責任者は必要ですか。 A. 必要です。GPSR・市場監視規則のもと、EU域内の責任者を置き、連絡先を表示する必要があります。

Q. GPSRはいつから適用されていますか。 A. 2024年12月13日から適用され、旧・一般製品安全指令を置き換えています。

Q. 日本の試験データはそのまま使えますか。 A. EUの整合規格・要求に適合していることの立証が必要で、追加試験や文書整備が求められる場合があります。

Q. REACHのSVHCはどう確認しますか。 A. 部材サプライヤーから含有物質情報を入手し、候補リストに該当する物質が成形品中に0.1重量%を超えないかを確認します。超える場合は情報伝達義務が生じます。

Q. 違反するとどうなりますか。 A. 市場からの回収・販売停止、当局による是正命令や制裁の対象となり得ます。違反は製品回収のコストだけでなく、ブランドの信頼にも影響します。

実務チェックリスト

  • 自社製品がCE対象・GPSR・分野別のどれに属するか分類したか
  • 適用される整合規格を特定し、リスク評価を行ったか
  • 技術文書(Technical File)と適合宣言を整備したか
  • EU域内責任者(2019/1020第4条) を選任し、製品に表示したか
  • REACH(必要なら唯一の代理人)・RoHSの要件を確認したか
  • 上市後の事故報告・市場監視対応の体制を整えたか
  • 輸入者・販売者との責任分担を契約で明確にしたか

まとめ

EU製品規制は、CEマーキングを中心に、GPSR・REACH・RoHS・分野別規則、そして EU域内責任者要件 が層をなす構造です。日系企業にとっての落とし穴は、CEマークの取得だけで満足し、域内責任者の選任や化学物質規制を見落とすことにあります。まず自社製品の規制マッピングから始め、適合・表示・責任者・市場監視を一体で設計することが、安定した市場アクセスの鍵となります。

TSM合同会社では、日系企業のドイツ・EU市場における製品規制対応、CEマーキング支援、域内責任者の体制づくりまでを一貫して支援しています。製品規制の全体設計にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください(法規制の初期整理・専門家連携サービスの詳細はこちら)。

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本記事は2026年6月14日時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の法務助言に代わるものではありません。具体的な判断は最新の法令と専門家への確認のうえで行ってください。

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