今週のサマリー
2月最終週は、米最高裁のIEEPA関税違憲判決をきっかけに、EU・米通商関係が急速に悪化した週となった。ドイツ国内では、CPI速報値が2%を下回りECB利下げ観測が浮上する一方、政府の財政拡大路線を受けてKfWが成長率予測を上方修正するなど、マクロ環境は「短期リスク・中期楽観」の構図が鮮明になっている。
今週の重要トピック
1. EU・米通商:最高裁判決から15%関税、協定凍結へ
今週最大のニュースは、米最高裁がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税を6対3で違憲と判断したこと。これにより、国別の「相互関税」およびフェンタニル関連の25%関税が無効化された。
しかしトランプ大統領は即座にSection 122(1974年通商法)を根拠に、全世界一律15%の新関税を発表。EU議会は通商協定(Turnberry Deal)の批准手続きを凍結し、通商委員長のベルント・ランゲ氏は「純粋な関税カオスだ」と批判した。
| 影響を受ける主な品目 | 現行税率 | 新税率(推定) |
|---|---|---|
| 一般工業製品 | 15%(協定ベース) | 15%(不変だが法的根拠が変更) |
| 鉄鋼・アルミ | 50% | 50%(Section 232で維持) |
| チーズ・農産物 | 協定ベース | 上昇の可能性 |
| 派生製品(鉄鋼含有品) | 50% | 緩和の可能性(数週間内) |
EUの対抗カード:
- 930億ドル相当の米国製品への報復関税リスト
- Anti-Coercion Instrument(ACI)=「Trade Bazooka」:サービス・公共調達・投資・知的財産への包括的制限措置
- EU執行規則に基づく自動発動関税(2月6日期限で一時停止中)
日本企業への影響: EU・米間の通商協定が実質的に機能停止状態にあることは、日本企業のグローバルサプライチェーンに直接影響する。特に「日本→EU生産→米国輸出」のルートを持つ企業は、3月のメルツ首相訪米の結果を待ちつつ、代替シナリオの検討を急ぐべき局面。
2. ドイツCPI 1.9%:ECB利下げの扉が開く
2月28日に発表されたドイツCPI速報値は前年比+1.9%で、市場予想の2.0%を下回った。1月のユーロ圏CPIも+1.7%とECBの2%目標を明確に下回っており、3月19日のECB理事会での利下げ議論が現実味を帯びている。
| 地域 | CPI(最新) | コアCPI | 前回 |
|---|---|---|---|
| ドイツ | +1.9%(2月速報) | +2.5% | +2.1% |
| ユーロ圏 | +1.7%(1月) | +2.2% | +1.9% |
バンク・オブ・アメリカは3月に25bp利下げを予想する一方、大半のエコノミスト(Reuters調査の85%)は2026年中の据え置きを見込んでおり、見方が分かれている。
3. ドイツ失業率6.5%・失業者307万人
2月の失業者数は307万人で、季節調整後では前月比1.5万人の減少。ただし前年同月比では8.1万人増加しており、製造業での雇用削減が継続。サービス業は堅調で、労働市場の二極化が進んでいる。
4. KfW、成長率予測を1.5%に上方修正
KfWは2026年のドイツGDP成長率予測を1.5%に引き上げた。政府の財政拡大(インフラ128.7B EUR投資)と輸出回復が背景。ゴールドマン・サックス(+1.1%)、欧州委員会(+1.2%)と比較しても強気の見通し。
| 機関 | 2025年実績 | 2026年予測 |
|---|---|---|
| KfW | +0.3% | +1.5% |
| ゴールドマン・サックス | +0.3% | +1.1% |
| 欧州委員会 | 横ばい | +1.2% |
| 連邦銀行 | — | +0.7〜1.2% |
5. 3月の制度変更:SCHUFA改革が最大の注目
3月末に施行されるSCHUFA(信用情報機関)の大改革が注目。スコアリング基準が250項目から12項目に簡素化され、消費者は無料で自身のスコアを閲覧・シミュレーション可能になる。1回限りの支払い遅延の削除期間も36ヶ月→18ヶ月に短縮。
今週の主要経済指標
| 指標 | 発表日 | 結果 | 前回 |
|---|---|---|---|
| 独CPI(2月速報) | 2月28日 | +1.9% | +2.1% |
| 独失業者数 | 2月28日 | 307万人(▲1.5万) | 308.5万人 |
| 独失業率 | 2月28日 | 6.5% | 6.6% |
| ユーロ圏ESI景況感 | 2月27日 | 98.3 | 99.0 |
来週の注目予定
| 日時 | イベント | 注目度 |
|---|---|---|
| 3月2日(月) | 製造業PMI確報値(独・ユーロ圏) | ★★ |
| 3月3日(火) | ユーロ圏失業率(1月) | ★★ |
| 3月4日(水) | ユーロ圏PPI(1月) | ★ |
| 3月5日(木) | サービス業PMI確報値 | ★★ |
| 3月7日(金) | 独鉱工業生産(1月) | ★★★ |
| 3月初旬 | メルツ首相訪米 | ★★★ |
来週の最大の焦点は、メルツ首相の訪米と、鉱工業生産の回復状況。通商問題の行方が3月全体の市場ムードを左右する見通し。
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